
猫がいなくなって家のまわりを探しているのに、名前を呼んでも出てこない。いつもなら返事をするように鳴く子なのに、鳴き声ひとつ聞こえない——。そんなとき、「もう近くにはいないのでは」と不安になる飼い主さんは少なくありません。けれど、呼んでも出てこない・鳴かないことは、猫がそこにいないという意味にはなりません。
この記事では、東京・埼玉ほか関東1都6県で迷子猫の捜索を行う猫探偵24が、猫が呼び声に「返事」をしにくい理由、外でパニックになった猫の行動、声以外の手がかりの見つけ方を整理します。猫の呼び声への反応を調べた国内の研究もあわせて紹介します。いなくなった直後の動き方(保健所・動物愛護センター・警察への届け出を含む)は 猫が脱走した時にまずやるべきこと にまとめていますので、まだの方は先にそちらをご覧ください。
家の中でも、猫は呼び声に「鳴いて返事」をするとは限らない
まず知っておきたいのは、ふだん家の中で過ごしているときでさえ、猫は名前を呼ばれて鳴き返したり駆け寄ったりするとは限らない、ということです。
飼い主の声は聞き分けている。でも反応は「耳と頭」
東京大学の齋藤慈子講師(当時)らの研究グループは、一般家庭で飼われている猫を対象に、猫が人の呼び声をどう受け止めているかを調べました。飼い主の姿が見えない状態で、見知らぬ人の声と飼い主の声で猫の名前を呼ぶ録音を順に聞かせ、その反応を観察したものです。
東京大学の紹介記事によると、その結果、呼び声に対する猫の反応は「飼い主に呼ばれた場合でも頭や耳を動かす定位反応が多く、鳴いたり尾を動かしたりする応答的な反応は少ない」ことがわかりました。その一方で、猫は見知らぬ人の呼び声と飼い主の呼び声を区別していることも明らかになっています。
つまり猫は、飼い主の声だと分かっていても、鳴いたり近寄ったりするより、耳や頭を声のほうへ向けて「聞く」反応をとりやすいということです。
自分の名前も聞き分けている
この研究の著者である齋藤氏・篠塚氏を含むグループが2019年に発表した研究では、一般家庭で暮らす猫が、自分の名前を、長さやアクセントのそろった一般的な名詞と聞き分けていることが報告されました。この研究でも、猫の反応は鳴き声や尾の動きより、耳や頭を動かす反応のほうが多く見られています。
自分の名前を聞き分けていても、それに声で応えるとは限らない。家の中での実験からは、こうした猫の傾向がうかがえます。
※ここで紹介した研究は、いずれも猫がふだん暮らしている場所で、落ち着いた状態のときに行われたものです。外で迷子になっている猫について調べたものではありません。2019年の論文の著者も、実験の場面と日常の場面は違うため、ごほうびやストレスのある場面では、もっとはっきりした反応が出るかもしれないと述べています。つまり研究から言えるのは「呼ばれても鳴いて応えないことは、家の中でもふつうにある」ということまでで、外で猫がどう反応するかは猫や状況によって変わると考えるのが自然です。いずれにしても、鳴き声が返ってこないことは「そこにいない」という意味にはなりません。
外に出た猫が声を出さない・出てこない理由
完全室内飼いの猫にとって、家の外は知らない音とにおいだらけの場所です。車の音、人の足音、ほかの猫や犬の気配。そうした中に放り出された猫は、強い緊張状態に置かれていると考えられます。
① 見つからないことを優先している
体の小さな猫にとって、知らない場所で声を出すことは、自分の居場所をまわりに知らせることにもなります。怖い思いをしている猫は、物陰に入り込んで息をひそめ、じっと動かずにやり過ごそうとすることがあります。鳴かないのは、猫なりに身を守ろうとしている状態とも言えます。猫が身を潜めやすい場所は 迷子猫はどこに隠れる? にまとめています。
② 飼い主の声でも、すぐは動けない
先の研究のとおり、猫は飼い主の声を聞き分けています。それでも、パニックに近い状態では、聞き覚えのある声がしても隠れ場所から出る決心がつかないことがあります。呼びかけに一瞬耳を動かしても、物陰の奥にいれば、その小さな反応は外からは見えません。
③ まわりの騒がしさに声がまぎれる
日中は人や車の往来があり、こちらの呼びかけも、猫が小さく鳴いた場合の声も、生活音にまぎれやすくなります。雨の日は雨音でさらに聞こえにくくなります(迷子猫の捜索は雨・台風の日どうする?)。
④ 大勢の声や追いかけられた経験で、さらに警戒する
家族や近所の方が大勢で名前を呼びながら歩き回ると、猫にとっては知らない声や足音が一度に増えることになります。また、一度姿を見せたときに追いかけられると、猫はより奥へ、より静かに隠れるようになることがあります。
「鳴かない=いない」と判断しないで
呼んでも反応がないと、「この辺りにはいない」と考えて、探す場所を家から離れたところへ移したくなります。けれど、ここまで見てきたように、猫は近くにいても声を出さないことがあります。反応がないことだけを理由に、家のまわりの確認を終わりにしないことが大切です。
✓ 一度見た場所も、時間を変えてもう一度/昼に覗いて何もいなかった植え込みや物置の下でも、夜や明け方には様子が違うことがあります。よそのお宅の敷地や物置は、持ち主の方に一声かけて了解を得てから確認してください。
✓ 声だけに頼らず、目でも探す/懐中電灯で奥まで照らしながら、物陰を一つずつ確認します。
✓ 家の中もあらためて確認する/外へ出たと思い込んでいても、家具の裏や収納の奥など、家の中で静かにしていることもあります。
いなくなってからの日数と探し方の関係は、猫がいなくなって何日まで見つかる? もあわせてご覧ください。
声以外の手がかりを探す
猫が声を出さなくても、近くにいれば何かしらの痕跡が残ることがあります。鳴き声を待つだけでなく、次のような手がかりにも目を向けてみてください。
✓ 暗がりで光る目/夜に懐中電灯で物陰を照らすと、猫の目が光を反射して見つかることがあります。目が光ったら、強い光を当て続けず、光を足元にずらして静かに様子を見ます。夜の探し方は 夜に迷子猫を探すコツ で詳しく紹介しています。
✓ 足跡や毛/車の下、室外機の裏、物置の床下など、土や砂ぼこりのたまる場所に足跡や抜け毛が残っていないかを見ます。
✓ ご近所の方の目撃情報/「夜中に見かけた」「庭を横切った」といった情報が手がかりになることがあります。聞き取りのポイントは 迷子猫の目撃情報はどう扱う? を、情報を集めるためのチラシは 迷子猫のチラシの作り方と効果的な配り方 をご覧ください。
✓ 防犯カメラの映像/持ち主の方にご協力いただける場合は、録画映像に通り道が映っていることもあります。お願いの仕方は 迷子猫の捜索に防犯カメラ映像を活かす方法 にまとめています。
呼びかけるなら、猫の気持ちに合わせて
呼びかけそのものが無意味なわけではありません。猫は飼い主の声を聞き分けているので、なじみのある声は、猫が「ここは安全かもしれない」と感じるきっかけになりえます。大切なのは、猫が怖がっている前提で声をかけることです。
✓ いつもの声のトーンで、静かに/大声で何度も呼ぶより、家で呼ぶときと同じ調子で。ごはんのときの呼び方など、猫が聞き慣れた言葉を使うのも一つの方法です。
✓ 呼んだら、しばらく待って耳を澄ます/呼び続けるより、間をあけて小さな物音や鳴き声がしないかを聞きます。
✓ 呼ぶのは、猫がよく知っている人が中心に/大勢で一斉に呼ぶと、知らない声が増えて逆効果になることがあります。
✓ 人や車の少ない時間帯を選ぶ/夜や明け方の静かな時間は、声も物音も届きやすくなります。
✓ 見つけても追いかけない/姿が見えても、近づこうとして急に動くと奥へ逃げてしまうことがあります。手を伸ばすと逃げてしまう場合は、迷子猫の捕獲器の使い方 にあるように、捕獲器を使った保護も選択肢になります。
なお、猫が自分で家に帰ってくることを期待して待つだけにするのはおすすめできません。帰巣本能についての考え方は 猫の帰巣本能はどこまで信用できる? で解説しています。
呼んでも出てこない迷子猫のご相談は猫探偵24へ
「近くにいるはずなのに、呼んでも出てこない」「鳴き声も聞こえず、どこを探せばいいのか分からない」——こうした段階でのご相談も承っています。猫が声を出さない以上、探す側が見る場所と時間帯を工夫することが欠かせません。
猫探偵24は関東1都6県(東京・埼玉・神奈川・千葉・茨城・栃木・群馬)を対象に、24時間365日ご相談を受け付けています。猫の行動に精通した猫捜索のプロが、近隣への聞き込み、持ち主の方にご協力いただける範囲での防犯カメラの映像確認、猫がひそみやすい場所の重点確認を組み合わせて捜索を進めます。
料金は1日22,000円(税込)〜のキャンペーン価格です。成功報酬なし(エリアによっては出張費が発生する場合があります)の日額制で、費用の考え方は 迷子猫の捜索をプロに頼む料金は? で解説しています。最新の料金は、お問い合わせの際にご確認ください。
出典:東京大学「ツレない猫、答えないけど飼い主の声聞き分ける」(2013年4月18日掲載/論文:Saito A. & Shinozuka K., 「Vocal recognition of owners by domestic cats (Felis catus)」, Animal Cognition, 2013)/Saito A. et al., 「Domestic cats (Felis catus) discriminate their names from other words」, Scientific Reports, 2019






